第5回地域協働型プライマリ・ケアセミナーinニセコ SOC研修会に参加して

       北海道大学大学院医学研究科 社会医療管理学講座

       医療システム学分野大学院生 保健師 羽原美奈子
 

 SOC(Sence of coherence)とは、たとえ極限状態のストレスを経験しても、心身の健康を守るばかりか、その経験を人間的な成長や発達の糧にさえすることができる。そうしたことができる要因や条件のことを言い、いわばSOCは人生究極の健康要因と言えるそうだ。

 現代は何かとストレスフルな時代である。しかしどんなストレスがあっても、それを苦にせず元気で明るく楽しく毎日を過ごしている人がいる。また、そのストレスを逆に仕事に生かしたり、生きがいをもったり、人生の目標を築くことができる人がいる。私はこのような人の状態が真の意味で健康・幸せというのではないかと思う。SOCの研修会では、私自身どうしたらそのような幸せな人生を得ることができるのか、SOCの力をどうやって高めていったらいいのかということに関心があった。と同時に(2番目に書いて申し訳ないが)、人々の健康づくりをお手伝いする保健師として、住民の方の健康管理にどのように活用していけるのか、その秘訣を伝授していただけると思い、山崎先生のお話を本当に本当に楽しみにしておりました。

 その結果自分なりに理解したことについて報告します。SOCを高める要件は、第一に人生経験が高いとSOCは高められる、第二に自分の他に信頼できる人がいると高められる、第3にストレスに対して柔軟性がある人のSOCは高いということだった。

 第1の人生経験だが、自分も年齢的には壮年期時代で、そろそろ中堅を過ぎベテラン域に突入のはずだ。しかし、ただ単に年を重ねて行くのではなく何事も経験すること、経験に飛びこんでいくことがSOCを高める要件のようだ。自分のことばかりで恐縮だが、自分は好奇心旺盛な性格で飛び込んでいくことに躊躇はしないものの、よくよく考えるてみると挑戦することと経験することとはちがう。あきやすい性格なためにしっかりと経験したといえるほど何事も経験できていないのが現状ではないだろうか? 2番目に学んだこと、自分の他に信頼がおける人(他者)がいるということはSOCを高めるには極めて重要であると言うことである。逆を言えば、SOCが低い状態≒信頼する人がいない、いわゆる誰のことも信じられない状況である。このことはストンと附に落ちた。SOCにとって、信頼されている、愛されている、見守られている、認められているといった感覚を生む他者の存在(legitmate others正当他者)は大変な味方になるわけだ。信頼がおける人がいるといないとでは大違いである。ではそういった人をすぐに作れるか?というとこれまた至難の技で、信頼関係も両者を映し出す鏡、相互関係のうちに成り立つものである。

 第3には、ストレスに対して柔軟に対処すること、これがSOCを高める大切な用件であった。これはたとえば、「このストレスとなる事項は自分には関係ない」と割り切るなどスルーしてしまったり、ストレスに対して楽天的に受け止めることなどが大切だそうだ。先生は柳のようにしなやかにとおっしゃっていたが、なるほどと、自分は柳の中でもできれば猫柳のように人をほっとさせる存在になりたいなと、なんとなく考えていた。

 その他、山崎先生は学問的にSOCの成り立ちを、首尾一貫感覚・三つの確信(把握可能感・処理可能感・有意味感)などから説明してくださった。が、このような難解語句は是非、山崎先生の本

1)2)

を購入なさって勉強されることをお勧めいたします。私も持参した本に、先生のサインをいただいちゃいました。

 最期にSOCを高めるために私がとても重要だと思った点、それは希望を持つことだ。希望はすべての事象にSOCを高めるものだと思う。私は時々希望をなくしてしまったり、機械音痴でパソコン操作も失敗することも多いのだが、この研修会において「希望」をうまくインストールすることができたように思う。これからも、生きて行く人生において、生活面において、仕事面において、是非SOC理論を活用させていただきたい。

 全道・全国の保健師・看護職のみなさん、元気がなくなっている様子が垣間見えるので、是非このSOC理論を活用し、日々の活動・業務にいかされてはいかがでしょうか?

 山崎先生、前沢先生このような研修会で貴重な勉強をさせていただきまして、本当にありがとうございました。
 

1)山崎善比古・戸ヶ崎泰典・坂野純子偏『ストレス対処能力SOC』有信堂、2008

2)山崎善比古・吉井清子著監訳:アーロン・アントノフスキー著 『健康の謎を解くストレス対処と健康保持のメカニズム』有信堂、2001

IMG_7478.JPG
※ セミナー会場の様子 
CIMG1946.JPG
※ 講師の山崎先生と

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
011-839-3974

(よつば会計事務所内)

一般社団法人地域医療教育研究所の公式ホームページにようこそ。
当研究所は地域医療教育をライフワークとする北海道大学名誉教授・前沢政次が代表理事を務め、地域医療をめざす学生への実習先の紹介・旅費補助、学生・研修医・保健医療福祉職員向けのセミナーの開催、地域住民や自治体への健康的まちづくりの提案や啓発活動を行っています。
基本理念は地域協働型プライマリーケアです。

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ

011-839-3974

一般社団法人
地域医療教育研究所

住所

〒001-0010
北海道札幌市北区北10条西1丁目1−1